賞味期限はどう決める?スコーンを検査に出して自分で設定した体験談
こんにちは。すたーとあっぷきっちんスクール生の原田です。
自分で作ったお菓子に、どんな根拠で賞味期限をつけていますか?私は、2022年6月、オンラインでスコーンの販売を始めました。
賞味期限は世に出回っている商品を参考にすればいいと、どこか軽く考えていました。でも、調べると日数はバラバラ。「みんなどうやって決めているの?」そんな疑問と不安から始まった、スコーンを検査機関に出して賞味期限を設定するまでの体験談をご紹介します。
目次
販売準備の中で立ち止まった瞬間
販売に向けて動き始めたのは、その年の4月。正直、賞味期限の設定は後回しにしていました。世に出回っているスコーンを参考にして、だいたいこれくらいかな、と決めればいいと思っていたからです。
ところが実際に調べてみると、常温保存、冷蔵保存、冷凍保存。お店によって日数は、あまりにも違いました。(販売日は決まっているのに…まずいかも)
準備が進む中、食品ラベルの作成もスタート。そして、いよいよ賞味期限を書く段階になったとき、手が止まりました。「……決められない。」
賞味期限は「作り手が責任を持つもの」
そこで木村さんに何気なく賞味期限の設定方法を尋ねてみると、作り手が責任を持って設定するものと教えていただきました。正直ドキッとし、怖くなりました。
私は製造場所(レストランの厨房)を間借りするため、適当に設定して食中毒などを起こしてしまったら大変なことになります。購入してくださるお客様はもちろん、場所を貸してくださっているレストランにも迷惑をかけてしまいます。
同時に、賞味期限を設定するために検査機関でお菓子を検査してもらう方法があることも教えていただき、「やってみたい!」と、即答。データで判断できるなら、胸を張って販売できる。そう思い、スコーンを検査に出すことを決めました。
2社の検査機関に問い合わせてみた
すぐに2社の検査機関に電話で問い合わせをしました。正直、個人でも対応してもらえるのかなぁと緊張しながらの連絡でした。電話での問い合わせで初めて、賞味期限検査は細菌検査と知りました。
1社目:食品微生物センター
食品微生物センターでは、検査品を目標日数を決めて検査するという方法でした。例えば、常温で7日持たせたいなら、その1.25倍の約9日まで検査を行い、そこから安全係数(0.8)をかけて賞味期限を設定するという方法です。
※なお、2025年3月消費者庁ガイドラインの改定では「安全係数は1に近づけることが望ましい」とされています。
冷凍については、基本的に菌は増えないという前提で日数を考えるとのこと。ただし、解凍後は常温か冷蔵かで条件が変わるため、冷蔵も常温と同様に考えてOKとのこと。
また、実際の販売と同じ状態で検査するのが理想だと説明を受けました。
検査回数の例も具体的で、作りたて/5日目/7日目/9日目というように段階的に調べる方法。
費用は、4回の検査で約11,000円とのこと。内訳は、基本の細菌検査:1回2,250円×4回=9,000円。そのうち2回に黄色ブドウ球菌検査(1回1,000円)を追加=2,000円で合計11,000円になります。
提出する量は、1回につき100g以上。4回検査なら100g×4個必要になります。
味が複数ある場合は、水分量の多いものや具材を混ぜ込んだものを優先するとよい、というアドバイスもありました。
見積もりは問い合わせの翌日という速さで届きました。
2社目:日本食品機能分析研究所
日本食品機能分析研究所では、まず販売形態のヒアリングから始まりました。賞味期限を決める専用の検査があるわけではなく、一定期間保管し、数値を見て判断する方法とのことでした。
例えば、1週間(7日)を目標にするなら、9日間問題ないか確認します。初回/3日/5日/7日/10日 で検査し、安全係数(0.7)をかけて設定する方法です。
また常温の場合は、作りたての状態からそのまま常温で検査する方法と、一度冷凍して解凍した状態から常温で検査する方法の2通りで比較もできるとのこと。
冷凍の場合は、菌が増えにくい前提のため、最初と最後の検査のみでもOKとのことでした。
検査品は、実際の販売状態で提出する必要があります。
費用は、基本の細菌検査が1回2,600円とのことでした。ただし、これとは別に 初発の標準検査で「衛生管理セット」の検査費用7,000円が追加で必要になります。電話で問い合わせた段階では合計金額は分からず、 見積もりを取って初めて総額を知ることができました。
必要量は、1回50g。食品微生物センターより少ない量で検査できる点は違いの一つでした。
また、保管を依頼する場合は、1ヶ月1,000円の保管料がかかるとのこと。
見積もりは問い合わせから約5日後に届きました。
2社を比較して感じたこと
共通していた点
- 目標日数より長く検査する
- 安全係数をかけて設定する
- 冷凍は菌が増えない前提である
- 販売と同じ状態で提出する
- 丁寧に細かく教えていただける
違いを感じた点
- 1回の必要量
- 保管料の有無
- 見積もりのスピード
2社を比較した結果、検査内容はほぼ同じで、見積もりでは約1万円の差がありました。さらに、検査の日程も発売日(6月1日)に間に合いそうだったため、今回は食品微生物センターに依頼することにしました。
検査前に決めた2つのこと
❶目標日数を決める
常温:7日間 / 冷凍:21日間 を目標に設定しました。
❷検査対象のスコーンを決める
販売する8種類の中でいちばん素材の混ぜ込みが多いココナッツラムレーズンスコーンを選びました。水分や具材が多いもののほうが、よりリスクが高いと考えたからです。いちばん条件が厳しそうなものを基準にすれば、ほかの種類についても安心して販売できると考えました。
実際に行った検査内容
依頼した検査は、基本セット(一般生菌・大腸菌群・大腸菌)と黄色ブドウ球菌検査です。
常温4回、冷凍4回、合計8回の検査を行いました。常温は、初発(作りたて)/5日目/7日目/9日目 に設定。冷凍は、初発/9日目/18日目/27日目 の4回。冷凍の保管温度は、検査機関の基準に基づき−20℃の条件で行われました。
検査では、目標とする日数よりも長めに保管し、問題がないかを確認します。保管日数は、「希望する日数×1.25」例えば常温では目標日数を7日間にしたいので、「7日×1.25=約9日」となり、9日間問題がないかを確認します。
さらに、栄養成分検査(7,900円)も実施することにしました。栄養成分は自分でも計算して算出していたため、実際の検査結果がどう出るのか、とても気になっていたからです。
検査当日までの準備
検査には、1回につき100gのスコーンが必要とのことでした。スコーンは1個50gだったため、検査用に16個、栄養成分検査用に2個、合計18個を準備しました。
また、販売方法と同じ状態で検査することが理想とのことだったため、梱包も実際の販売と同じ仕様にしました。常温用は、ガス袋に脱酸素剤を入れて10個。(栄養成分検査用は常温に含む)冷凍用は、ガス袋に入れたあと一度冷凍し、8個用意しました。
2022年5月1日、常温用と冷凍用をそれぞれの箱にまとめて梱包し、2箱に分けてヤマト運輸の着払いで検査センターへ送りました。2022年当時は着払い(送料負担なし)で対応可能でした。冷凍便を含む2箱分の送料がかからなかったのは、正直ありがたかったです。
発送時の梱包状態

速報メールと、毎回のドキドキ
到着日(発送の翌日・5月2日)には、「検体が届きました」と電話連絡をいただきました。
ちょうど翌日5月3日からGW連休に入るとのことで、今後の検査や連絡のスケジュールについても丁寧に説明してくださいました。会社自体は日曜・祝日はお休みですが、検体の検査は休日に関係なく進めていただけるとのこと。
また、初回の検査で万が一結果が良くなかった場合は、次の対応について相談しながら進めると伺い、安心感がありました。
そして予定通り検査がスタート。その日のうちに、栄養成分検査の速報メールが届きました。あまりの早さに驚きました。自分で計算していた数値との差もほとんどなく、ほっとした瞬間でした。
参考:栄養成分(カロリー)検査報告書

その後も、常温・冷凍それぞれの検査ごとに超速報メール が届きます。夜間に届くこともあり、迅速に対応していただいているのだと感じました。早く結果を知りたい身としては、本当にありがたかったです。
検査期間中は、担当の方が「結果は良好ですよ」とお電話をくださることもあり、とても丁寧にサポートしていただきました。
また、メールが届いても、 検査ファイルを開くまでは結果が分かりません。そのため、毎回ドキドキしながら開いていました。
そして結果は…
発売日前日(5月31日)に、すべての検査が無事に完了しました。(これから検査をされる方は、ぜひ余裕をもって…!)
最終的な結果は、
- 常温:9日間保管で陰性→ 賞味期限7日間に設定
- 冷凍:27日間保管で陰性→ 賞味期限21日間に設定
目標としていた日数で、きちんと根拠のある賞味期限をつけることができました。
検査報告の流れ
- 検査ごとに超速報メールが届く
- 個別検査報告書
- 個別検査総評
- 最終的な全体の検査報告書
メールにファイルが添付されて届きます。
参考:常温保管5日目の個別検査報告書

参考:常温保管5日間の検査総評

参考:常温保管の最終的な検査報告書

官能検査で確かめたこと
また、賞味期限検査では 風味や食感の変化までは分かりません。そのため、自分自身で官能検査を行うことが望ましいとの説明もありました。
そこで私は、常温の検査日(作りたて/5日目/7日目/9日目)に合わせて、 実際に同じスコーンを食べ、状態を確認しました。
検査の数値だけでなく、 安全で、そしておいしいか を自分の舌でも確かめる。その両方がそろってこそ、安心して販売できるのだと感じています。
かかった費用と、終えて感じたこと
今回の検査費用は、2022年5月当時で29,900円(税別)でした。
| 検査内容 | 回数 | 金額(税別) |
| 細菌検査 (常温) | 4 | 11,000 |
| 細菌検査 (冷凍) | 4 | 11,000 |
| 栄養成分検査 | 1 | 7,900 |
※黄色ブドウ球菌検査は細菌検査の1回目と4回目の検査と一緒に行います。
決して安い金額ではありませんでしたが、 検査の丁寧さや迅速な対応、そして得られた安心を思うと、私にとっては納得のいく費用でした。
検査を終えたとき、心から「やってよかった」と思えました。一番の収穫は、自分が納得して販売できるようになったことでした。
なんとなく7日、ではなく根拠があって7日。その安心感は、想像以上に大きかったです。
賞味期限のラベルを貼るときの気持ちは、検査前とはまったく違っていました。不安なまま売るより、自信を持って送り出せるほうが、きっと気持ちが軽いと思います。
この体験談が、これからお菓子販売を目指す方の小さな安心につながれば嬉しいです。







