小さなお菓子屋さんを始めると、必ずぶつかるのが「価格設定」です。

「この値段で高くないかな?」
「私がこの値段で売って良いのかな?」
「安くしないと売れない?」

ですがその前に、まず整理しておきたいことがあります。
小さなお菓子屋さんには、原価の考え方が2種類あるということです。
ここを分けずに価格を決めると、いつまでも不安が消えません。

ページの最後に原価計算シートのプレゼントがありますので、ぜひチェックしてみてください!

原価の考え方は2種類ある

①月1回程度の製造・出店の場合

この場合は、「1gいくら」で細かく計算するよりも、
その日のためにかかった総額が原価
と考える方が実態に近くなります。

例えば:
今回のための試作費
今回購入した食材費
包装資材代
レンタルキッチン代
出店料や駐車場代

これらをすべて合算します。

そして、
売上 − かかった総額 = 残り
この残りが、実質的な利益です。

※ただしこの中に自分の人件費は含まれていないことが多い、という現実もあります。
(計算に入れたい場合は、もちろん入れてください)

月1回型の方は、大袋仕入れが難しい場合が多いです。
だからこそ「総額思考」が現実的なのです。

大袋仕入れが難しい理由

もちろんモノによりますが、今月買った食材を来月にも使うの…?と感じませんか?💦

なので、今月の出店のために食材を新しく買って、また来月の出店の際はその時に買う、というスタイルになるかと思います。

大袋で買うと割安(というより小袋が割高)になりますが、
【大袋で買ってもある程度の期間で使いきれない】となります。

→結果として【小袋をその都度買う】という着地点になります。

② ある程度コンスタントに製造する場合

継続的に製造する場合は、1g単価での原価計算が必要になります。

流れは次の通りです。

  1. 食材それぞれの「1gいくら」という単価を出す
  2. 使用g数をかける
  3. すべての食材で計算して、合計を出す
  4. 出来上がり個数で割る
  5. 包装資材を足す

1gいくら、という計算する場合の練習問題をやってみましょう!

【練習問題】パンを販売するとします。パン1袋の原価(食材+包装資材)はいくらですか?

■3個分のレシピで、販売時は1袋1個入りです。
・強力粉 280g
・食塩 4g
・きび糖 12g
・インスタントドライイースト 3g
・無塩バター 20g

■包装は、パン1つにつき袋使います。

■使用食材/包装資材
・強力粉 1kgで425円
・食塩 1kgで378円
・きび糖 750gで328円
・インスタントドライイースト 125gで788円
・無塩バター 450gで1037円
・袋 100枚で184円

【練習問題の回答】パン1袋は65.4円

STEP1、<食材>食材それぞれ、1gいくらという単価を計算する。

・強力粉 1kgで425円
▶1000gで425円
▶425円÷1000g
=1gは0.425円
という感じで、【1gいくら】を計算します。

全ての食材で計算すると…
・強力粉 1g 0.425円
・食塩 1g 0.378円
・きび糖 1g 0.437円
・インスタントドライイースト 1g 6.304円
・無塩バター 1g 2.304円
となります。

STEP2、<食材>食材それぞれ1gいくらの数字に使うg数をかける。

・強力粉は280g使うので、1g 0.425円×280g=119円
という感じで、【今回使うgはいくら】が出ます。

計算すると…
・強力粉 280g 119円
・食塩 4g 1.512円
・きび糖 12g 5.248円
・インスタントドライイースト 3g 18.912円
・無塩バター 20g 46.089円

STEP3、<食材>食材にかかる合計金額を出す。

先ほど出した【今回使うgはいくら】を全部足します。
・強力粉 280g 119円
・食塩 4g 1.512円
・きび糖 12g 5.248円
・インスタントドライイースト 3g 18.912円
・無塩バター 20g 46.089円
ーーーーーーーーーー
小計 190.76円

この190円というのが、
・強力粉 280g
・食塩 4g
・きび糖 12g
・インスタントドライイースト 3g
・無塩バター 20g

つまりパン3個分の食材費です。

STEP4、<食材>合計金額③を、できあがる個数で割ると、製品1つにかかる食材費がわかる。

強力粉280gで作ると今回はパンが3個できるので、
190.76円÷3個
=1個63.6円
という食材費になります。

STEP5、<食材>1袋何個入りにするかが決まっているなら製品単価④に個数をかける。

そうすると、1袋の食材単価がわかります。

今回はパン1個を1袋に入れて売る想定ですが、例えば、クッキー5枚を1袋に入れる場合だと、クッキー1枚いくら×5枚の金額が1袋の食材費となります。

STEP6、<包装資材>包装資材それぞれ、袋1枚いくら、乾燥剤1ついくら、という単価を計算する。

食材でやったことを、次は包装資材でも同じことをやります。
今回は
・袋 100枚で184円
▶184円÷100枚
=1袋は1.84円

※シールやモールを使う場合は、それぞれ、シール1枚いくら、モール1本いくらを出します。

STEP7、<食材+包装資材>食材の1袋単価⑤と1袋にかかる包装資材⑥を足すと食材+包装資材の原価が出る!

今回は1袋の中身が、
・パン1個
・袋1枚
なので、
・パン1個の食材費:63.6円
・袋1枚 :1.84円
ーーーーーーーーー
合計 65.4円

という感じで、「食材+包装資材の原価」が見えます。

原価率は何割が正解?

よく「原価3割」と言われます。
ですが、3割でなければならない理由はありません。

洋菓子店では、

  • 生ケーキは4割
  • 焼き菓子は2割

など、商品ごとにバランスを取っています。

大切なのは、商品単体ではなく、お店全体で設計することです。

【具体例】クッキーの場合

・材料費:150円
・販売価格:400円
・利益:250円

→原価率は約37.5%

このように、まずはシンプルに計算してみることが大切です。

価格設定は自由、だけど残ったものが自分の人件費

【いくらでなければならない】ということはなく、【自分がつけたい金額】に設定して良いのです。

ですが現実として、
売上から

  • 食材費、包装資材などの製造原価
  • 家賃、レンタルキッチン代
  • マルシェなら出店料、当日の交通費、製造費の交通費
  • ネットショップならネットショップの手数料
  • (今後将来何かを外注する時のための余力)

などを差し引いた残りが、自分の人件費になります。

高くても売れる人がやっていること

価格を上げる前に必要なのは、付加価値を伝える発信です。

  • どれだけ手間がかかっているか
  • どれだけ吟味しているか
  • どれだけ考えているか

知らなければ、価値は存在しないのと同じです。

価格より価値が上回る状態をつくる。
その積み重ねが、価格を支えます。

ただし前提として、
「作りたいもの作りました!買ってー!」
と訴えかけるよりも、ある程度お客様側にニーズのあるものを考える方が売れ行きに直結します。

【結論】お菓子の価格設定はこう決める

初心者の方はまず、

  • 原価率30〜40%を目安にする
  • 迷ったら少し高めに設定する(後から下げることは心理的ハードルが低いです)
  • 売れ行きを見て調整する

この3つを意識するだけで、大きく失敗する可能性は下がります。

よくある価格設定の失敗

  • 安くしすぎて利益が残らない
  • なんとなくで価格を決めてしまう
  • 周りに合わせすぎる

価格は「なんとなく」で決めると、後から修正が難しくなります。

FAQ|価格設定のよくある質問

Q1.他のお菓子屋さんで何かやっている価格の付け方はありますか?

A1.例えば店頭販売やマルシェで販売する際、
1個350円の商品を
通常だと3個1,050円のところ、3個まとめて買うと1,000円ぽっきり、などまとめて買うとちょっとお得作戦などがあります。

Q2.同じ商品でも、出店するイベントによって販売価格を変えることは有りですか?

A2.実際にイベントによって価格を変更するお菓子屋さんはいます。

お客様の立場に立って考えた時に違和感がなければ有りだと思います。

Q3.ネットショップで販売する際、送料込みの価格設定が良いですか?送料別の方が良いですか?

A3.商品と客層と発送場所によります。

送料込み・送料無料と書かれていても、現実として送料0円はありえません(運送会社が払っています)

つまり、商品価格に上乗せしているため、送料は「お客様の支払いに含まれている」のです。

一定金額で送料を計上したとしても、実際に運送会社へ支払う送料との差額はお菓子屋さん側が吸収することになります。

例)北海道に送る送料2,000円、東京に送る送料1,000円
送料一律1500円で計算している場合は北海道との差額500円はお菓子屋さんの負担となります。

まとめ|価格はセンスではなく構造

価格設定の前に、

  1. ご自身の販売頻度が月1型か継続型かを整理する
  2. 正しく原価を出す
  3. 利益を悪者にしない

価格は感覚ではありません。
構造です。

まずは一度、ご自身の数字と向き合ってみてください。

価格設定はとても重要ですが、

実は

・どんな商品にするか
・どこで販売するか
・誰に届けるか

によって最適な価格は変わります。

「自分の場合はどうしたらいいのか分からない」
という方は、

個別相談で整理することもできますので、
お気軽にご相談ください^^

▼ 原価計算シートはこちら

ABOUT ME
yuko kimura
名古屋で菓子製造/飲食店営業許可付きシェアキッチン"すたーとあっぷきっちん"を営んでます / @startup5kitchen / '88年名古屋生 / 名工大建築卒 / 栄養士 / 一児の母 / 民間補助金のような、お菓子を作って売りたい方が頼れる財団を作りたい!