小さなお菓子屋さんを始めると、必ずぶつかるのが「価格設定」です。

「この値段で高くないかな?」
「私がこの値段で売って良いのかな?」
「安くしないと売れない?」

そう感じる方は、とても多いです。

ですがその前に、まず整理しておきたいことがあります。

小さなお菓子屋さんには、原価の考え方が2種類あるということです。

ここを分けずに価格を決めると、いつまでも不安が消えません。

この記事では、月1回程度の製造・出店の場合と、ある程度コンスタントに製造する場合に分けて、お菓子販売の原価計算の考え方を整理していきます。

ページの最後に原価計算シートのプレゼントがありますので、ぜひチェックしてみてください。

原価の考え方は2種類ある

小さなお菓子屋さんには、原価の考え方が2種類あると思っています。

  • 月1回程度の製造頻度の場合の原価。
  • 毎日とは言わなくとも、ある程度コンスタントに製造する場合の原価。

この2つを分けずに考えると、原価計算が難しく感じてしまいます。

月1回程度の販売なのに、いきなり「1gいくら」で細かく計算しようとすると、手が止まってしまう方もいると思います。

反対に、毎週・毎月コンスタントに同じ商品を販売するなら、「今回なんとなくこれくらいかかった」だけでは、価格設定や利益の見通しが立てにくくなります。

まずは、ご自身の販売スタイルがどちらに近いかを考えてみましょう。

①月1回程度の製造・出店の場合

月1回程度の製造や出店の場合は、「1gいくら」で細かく計算するよりも、
その日のためにかかった総額が原価
と考える方が実態に近くなります。

例えば、

  • 今回のための試作費
  • 今回購入した食材費
  • 包装資材代
  • レンタルキッチン代
  • 出店料や駐車場代

これらをすべて合算します。

そして、
売上 ー かかった総額 = 残り
この残りが、実質的な利益です。

※ただしこの中に自分の人件費は含まれていないことが多い、という現実もあります。
(計算に入れたい場合は、もちろん入れてください)

言ってしまうと、
売上 ー かかった費用の合計
を引いて残った分が、自分の人件費や、次の販売に使えるお金になります。

② ある程度コンスタントに製造する場合

ある程度コンスタントに製造する場合は、1g単価での原価計算が必要になります。

流れは次の通りです。

  1. 食材それぞれ、1gいくらという単価を計算する
  2. 食材それぞれ1gいくらの数字に、使うg数をかける
  3. 食材にかかる合計金額を出す
  4. 合計金額を、できあがる個数で割る
  5. 1袋何個入りにするかが決まっているなら、製品単価に個数をかける
  6. 包装資材を足す

この流れで計算すると、1袋あたりの食材+包装資材の原価が見えてきます。

同じ商品を繰り返し販売していくなら、1袋あたりの原価を出しておくことで、価格設定もしやすくなります。

月1回程度の製造・出店は「かかった総額」が原価

月1回程度の頻度だと、食材の購入がその都度になることが多いです。

もちろんモノによりますが、
「今月買った食材を来月にも使うの…?」
と感じませんか?

なので、今月の出店のために食材を新しく買って、また来月の出店の際はその時に買う、というスタイルになるかと思います。

大袋で買うと割安です。
というより、小袋が割高です。

ですが、大袋で買ってもある程度の期間で使いきれないとなります。

結果として、小袋をその都度買うという着地点になります。

なので、1gいくらという原価計算をするよりも、
今回の製造・出店にかかった費用の合計が原価
と考えた方が、実態により近いお財布感になります。

月1販売で書き出すもの

月1販売の場合は、まず、○月○日の製造、あるいは○月○日の販売に向けてかかった費用をすべて書き出します。

  • このために購入した試作代
  • このために購入した食材費
  • このために購入した包装資材
  • レンタルキッチン代
  • マルシェなら出店料
  • 駐車場代
  • 当日の交通費
  • ショップカードやチラシなどの印刷費
  • ネットショップで販売する場合の梱包資材や手数料 など

最初から細かく完璧に分けようとしなくても大丈夫です。

まずは、「今回の販売のために出ていったお金」を書き出すことが大切です。

売上からかかった総額を引いてみる

費用を書き出したら、すべて合算します。

そして、売れた金額がその合計を超えれば黒字。
超えられなければ赤字です。

売上 − かかった費用の合計 = 残り

この残りが、自分の手元に残るお金です。

販売したあとに、

「完売したのに、思ったより残っていない」
「売れた気がしたけれど、計算するとあまり残らない」
「次の材料費を買ったら、ほとんど残らない」

ということは珍しくありません。

だからこそ、販売後に一度、数字を振り返ることが大切です。

大袋仕入れが難しい理由

月1回型の方は、大袋仕入れが難しい場合が多いです。

もちろんモノによりますが、今月買った食材を来月にも使うの…?と感じることがあります。

小麦粉、砂糖、チョコレート、ナッツなど、ある程度日持ちするものもあります。

ですが、販売頻度が少ないうちは、保管場所や賞味期限、品質管理も考える必要があります。

大袋で買うと割安ですが、使いきれないと結局ロスになります。

そのため、月1回販売では、毎回必要な分を買って、今回かかった総額を見る方が現実的です。

継続販売は「1gいくら」で原価計算する

ある程度コンスタントに製造する場合は、1g単価での原価計算をしていきます。

毎回同じ商品を作る場合、1袋あたりの原価がわかっていると、価格設定もしやすくなります。

「この商品は、1袋あたりいくらで作れているのか」
「包装資材まで入れると、実際はいくらかかっているのか」
「販売価格から原価を引いたら、どれくらい残るのか」

このあたりが見えてくると、価格に対する不安も少しずつ整理しやすくなります。

1g単価で計算する流れ

継続販売の場合の流れは次の通りです。

  1. 食材それぞれ、1gいくらという単価を計算する。
  2. 食材それぞれ1gいくらの数字に、使うg数をかける。
  3. 食材にかかる合計金額を出す。
  4. 合計金額を、できあがる個数で割ると、製品1つにかかる食材費がわかる。
  5. 1袋何個入りにするかが決まっているなら、製品単価に個数をかける。
  6. 包装資材を足す。

これで、1袋の原価がわかります。

文章で読むと難しく感じるかもしれませんが、やっていることはシンプルです。

「買った金額を内容量で割る」
「使った量をかける」
「できあがった個数で割る」
「袋やシールなどを足す」

この順番で見ていきましょう。

【練習問題】パン1袋の原価を計算してみよう

1gいくら、という計算をする場合の練習問題をやってみましょう。

パンを販売します。
パン1袋の原価、食材+包装資材はいくらでしょうか?

練習問題

■3個分のレシピで、販売時は1袋1個入りです。

  • 強力粉 280g
  • 食塩 4g
  • きび糖 12g
  • インスタントドライイースト 3g
  • 無塩バター 20g

■包装は、パン1つにつき袋を1枚使います。

■使用食材・包装資材は次の通りです。

  • 強力粉 1kgで425円
  • 食塩 1kgで378円
  • きび糖 750gで328円
  • インスタントドライイースト 125gで788円
  • 無塩バター 450gで1,037円
  • 袋 100枚で184円

STEP1 食材それぞれ1gいくらか計算する

まず、食材それぞれ、1gいくらという単価を計算します。

強力粉は1kgで425円です。

1kgは1000gなので、
425円 ÷ 1000g = 1g 0.425円
という感じで、1gいくらを計算します。

すべての食材で計算すると、

  • 強力粉 1g 0.425円
  • 食塩 1g 0.378円
  • きび糖 1g 0.437円
  • インスタントドライイースト 1g 6.304円
  • 無塩バター 1g 2.304円

となります。

STEP2 使用g数をかける

次に、食材それぞれ1gいくらの数字に、使うg数をかけます。

強力粉は280g使うので、
1g 0.425円 × 280g = 119円
という感じで、今回使うgはいくらかを出します。

計算すると、

  • 強力粉 280g 119円
  • 食塩 4g 1.512円
  • きび糖 12g 5.248円
  • インスタントドライイースト 3g 18.912円
  • 無塩バター 20g 46.089円

となります。

STEP3 食材にかかる合計金額を出す

先ほど出した、今回使うgはいくらかを全部足します。

  • 強力粉 280g 119円
  • 食塩 4g 1.512円
  • きび糖 12g 5.248円
  • インスタントドライイースト 3g 18.912円
  • 無塩バター 20g 46.089円

合計 190.76円

この190.76円が、

  • 強力粉 280g
  • 食塩 4g
  • きび糖 12g
  • インスタントドライイースト 3g
  • 無塩バター 20g

つまり、パン3個分の食材費です。

STEP4 出来上がる個数で割る

次に、食材の合計金額を、できあがる個数で割ります。

強力粉280gで作ると、今回はパンが3個できるので、
190.76円 ÷ 3個 = 1個63.6円
という食材費になります。

STEP5 1袋何個入りにするかを考える

1袋何個入りにするかが決まっているなら、製品単価に個数をかけます。

そうすると、1袋の食材単価がわかります。

今回はパン1個を1袋に入れて売る想定です。

例えば、クッキー5枚を1袋に入れる場合だと、
クッキー1枚いくら × 5枚
の金額が、1袋の食材費となります。

STEP6 包装資材の単価を計算する

食材でやったことを、次は包装資材でも同じようにやります。

今回は、
袋100枚で184円
なので、
184円 ÷ 100枚 = 1袋1.84円
です。

シールやモールを使う場合は、それぞれ、シール1枚いくら、モール1本いくらを出します。

STEP7 食材+包装資材の原価を出す

最後に、食材の1袋単価と、1袋にかかる包装資材を足します。

今回は1袋の中身が、

  • パン1個
  • 袋1枚

なので、

  • パン1個の食材費:63.6円
  • 袋1枚:1.84円

合計 65.4円

という感じで、食材+包装資材の原価が見えます。

このように計算すると、「なんとなく高そう」「たぶんこれくらい」ではなく、数字として原価が見えるようになります。

原価に入れるもの・見落としやすいもの

原価計算をする時に大切なのは、食材費だけで終わらせないことです。

お菓子を販売するためには、材料以外にもいろいろな費用がかかっています。

食材費

まずは食材費です。

小麦粉、米粉、砂糖、卵、バター、チョコレート、ナッツ、ドライフルーツ、牛乳、生クリーム、塩、ベーキングパウダー、バニラエッセンスなど。

レシピに使うものは、基本的に食材費として見ておきます。

月1回販売の場合は、今回の販売のために購入した食材費を合計します。

継続販売の場合は、食材ごとに1g単価を出して計算していきます。

包装資材

袋、箱、シール、乾燥剤、脱酸素剤、台紙、リボン、掛け紙なども、原価に入れます。

お菓子販売では、最後は袋や箱に入れてお客様に届けます。

1枚数円、1個数円でも、積み重なると大きな金額になります。

特にギフト商品や通販商品では、包装資材費が大きくなりやすいです。

レンタルキッチン代

シェアキッチンやレンタルキッチンを使う場合は、キッチン利用料も見ておきます。

月1回販売の場合は、その販売のために使ったキッチン代を、今回かかった費用の合計に入れるとわかりやすいです。

継続販売の場合は、月の利用料を販売個数で割るなどして、1個あたり、1袋あたりにどのくらい乗せるかを考える必要があります。

▶︎関連記事:シェアキッチンで作ったお菓子は販売できる?通販・マルシェ・委託販売の注意点

マルシェ出店料・駐車場代

マルシェに出店する場合は、出店料、駐車場代、交通費などもかかります。

これらを入れずに、

「材料費だけ見たら利益が出ている」

と思っていても、実際にはあまり残っていないことがあります。

月1回販売の場合は、マルシェ出店料や駐車場代も、今回の販売にかかった総額として見ておきましょう。

ネットショップ手数料・発送資材

ネットショップで販売する場合は、ネットショップの手数料、梱包資材、段ボール、緩衝材、送料なども関係してきます。

ネットショップの価格設定や送料の考え方は、別記事で詳しく扱います。

ここではまず、「ネット販売にも販売にかかる費用がある」と覚えておきましょう。

お菓子通販全体の流れを確認したい方はこちら

お菓子通販の始め方|許可・ラベル・発送・ネットショップ作成まで

試作費

見落としやすいのが試作費です。

販売前には、何度も試作をすることがあります。

試作用の食材、包装テスト、写真撮影用の商品なども、今回の販売に向けてかかっている費用です。

特に月1販売の場合は、今回の販売のためにかかった費用として入れておくと、実態に近くなります。

自分の人件費

原価計算をする時、自分の人件費まで入れるかどうかは悩ましいところです^^;

  • 試作する時間。
  • 買い出しに行く時間。
  • 製造する時間。
  • ラッピングする時間。
  • 販売する時間。
  • 発送する時間。

これらはすべて、自分が働いている時間です。

ただ、最初から時給換算まで入れると、計算が難しく感じる方も多いと思います。

まずは、実際に出ていったお金を見える化するところから始めましょう。

その上で、売上からかかった費用を引いて残った分が、自分の人件費や次の販売のための余力になります。

次に読むおすすめ記事

まとめ|まずは「いくらかかっているか」を見える化しよう

お菓子販売の原価計算は、最初は難しく感じるかもしれません。

ですが、まずは2つに分けて考えると整理しやすくなります。

  • 月1回程度の販売なら、今回の製造・出店にかかった費用の合計を見る。
  • ある程度コンスタントに販売するなら、1g単価で1袋あたりの原価を出す。

そして、食材費だけでなく、包装資材、レンタルキッチン代、出店料、駐車場代、ネットショップ手数料、試作費なども見落とさないようにしましょう。

原価が見えると、価格設定の不安が少しずつ減っていきます。

「なんとなく安くする」のではなく、数字を見て価格を考えられるようになります。

まずは一度、ご自身の商品にかかっているお金を書き出してみてください^^

お菓子販売の原価計算で迷っている方へ

「材料費はなんとなくわかるけれど、袋や箱まで入れるの?」
「月1回の販売でも1g単価で計算した方がいい?」
「完売したのに、なぜか手元にお金が残らない…」

そんな方は、まずご自身の商品にかかっているお金を見える化してみましょう。

原価がわかると、価格設定の不安も整理しやすくなります。

▼原価計算シートはこちら

食材費・包装資材・販売価格を整理しながら、あなたの商品に合った価格を考えてみてください。

小さなお菓子屋さんLabでは、小さなお菓子屋さんを始めたい方に向けて、原価計算・価格設定・製造場所・販売方法など、販売前に確認したいことを一緒に整理するサポートをしています。

ひとりで悩み続ける前に、まずは今の状況を整理してみてください。

▶︎個別相談の詳細はこちら

ABOUT ME
yuko kimura
名古屋で菓子製造/飲食店営業許可付きシェアキッチン"すたーとあっぷきっちん"を営んでます / @startup5kitchen / '88年名古屋生 / 名工大建築卒 / 栄養士 / 一児の母 / 小さなお菓子屋さん始め、やりたいことに一歩踏みだす人を増やしたい!