「お菓子販売を本格的に始めたいけれど、起業手続きや税金のことがよくわからない…」というお悩みはありませんか?
この記事では、お菓子販売をビジネスとしてスタートする際に必要な「起業・事業運営の全体像」から、「開業届・確定申告」「補助金や融資」「保険」など、実務に欠かせない知識をまるっと解説します!
目次
開業にまつわる役所
よく「開業届を保健所に出して…?あれ…?」というご相談をいただくので、開業にまつわる役所関係についてまとめました!

- 税務署:開業届、確定申告
- 保健所:食品衛生責任者、営業許可、届出
- 消防署:防火管理者
- 保険屋さん:保険
- 商工会:補助金、融資(公庫)、帳簿付け、各種経営相談
ややこしいのは、上に挙げた役所や窓口はあくまで相談窓口であって、行かなければならない所と、行くか行かないか任意のものが混ざっている部分だと感じています^^;
小さなお菓子屋さんの確定申告と開業届
実は、開業届と確定申告は別物です。開業届を出していてもいなくても、【確定申告が必要な人】に該当する場合は、開業届を出していなくても確定申告をする必要があります。
確定申告とは税金の自己申告&自主納税システム
「お金を稼いだら、税金を払わなければならないのでは…?脱税にならない…?」と、漠然と不安に思っていませんか?(日本では、税金含めお金の勉強をする機会が足りないと個人的に感じます^^;)
私たちには、所得に応じて税金を納める義務があります。会社員の経験がある方は、給与明細に所得税や住民税という項目で天引きされていませんでしたか?会社が税務処理をしてくれていたのです。個人事業主の場合は、自分でやらねばなりません。それが確定申告です。
1年間(1月1日から12月31日)の所得を計算して、年明け2月16日から3月15日までの間に税務署へ申告・納税します。
とてもざっくりですが、
売上 ー 経費 = 所得金額
所得金額 ー 控除 = 課税所得
課税所得を計算して、国税庁の確定申告のページに入力していくと所得税等の税金額が計算されますので、納税します。
確定申告する必要のある人とは?
開業届を出していてもいなくても、【確定申告する必要のある人】を国税庁が定めています。
- 給与所得がある方
- 公的年金等に係る雑所得のみの方
- 退職所得がある方
- 1-3以外の方
・参考:国税庁HP 確定申告が必要な方
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2022/01/1_06.htm
小さなお菓子屋さんに関係しそうな①④について詳しく見ていきます。
①給与所得がある方:勤め先から給与をもらっていて、それ以外に年間20万円超の所得がある方
④1-3以外の方:専業主婦や個人事業主で年間48万円超の所得がある方
なぜ年間48万円なのでしょうか?
実際に税金額を決定する際には、所得(課税される金額)から控除として規定の金額が免除されます。この控除のうち、誰でも受けられる「基礎控除」が48万円なのです。
つまり48万円までの所得であれば、48万円が自動的に引かれるため、課税所得がゼロとなり申告の必要がないと言うわけです。
・参考 国税庁HP 基礎控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1199.htm
補足:2020年に法改正があり基礎控除が38万円→48万円に引き上げられました。今後も法改正により金額や法制度が変わる可能性があります。
開業届を出すと個人事業主になれる
税務署に開業届という紙を出すと(今時WEBでも提出できますね)、個人事業主になれます。
個人事業主になると、税務署から確定申告や帳簿の付け方の勉強会などの案内が届くようになります。
確定申告の話で、④個人事業主で48万円未満の所得の場合、確定申告しなくて良い(確定申告が必要な人に該当しない)、と書きましたが、青色で確定申告をすると、赤字を繰越すことができるので、開業届を出したら確定申告した方が無難です。
個人事業主になる対外的なメリットとしては、もし食材や包装資材などの仕入れで、一般消費者は購入できず、事業者のみが仕入れられる仕入れ先があれば、個人事業主になる必要があると言えます。
開業届と確定申告の関係性
確定申告には、
- 白色申告
- 青色申告
という2種類があります。
帳簿などが簡便なものは白色ですが、特別控除として65万円控除されるのは青色申告です。途中で切り替えることも可能なので、記帳の作業と稼ぎを見て、どちらか選びましょう。
※青色申告は、開業届(青色申告承認申請書)を出していることが条件になります。
小さなお菓子屋さんは開業届、どうしているの?
シェアキッチンの作り手さんでいうと、
- 主婦さん(パート有/無)でお菓子販売
- 正社員をしながら副業でお菓子販売
- たまに学生さん
という属性の方々なので、ご家族の扶養に入っている場合が多いです。
そんなに売上が大きくない場合、「開業届を出すほどでは…」ということで出していない場合も多々あります。(開業届を出していなくても、確定申告が必要な人に該当しなくても、何をいくらでいくつ売った、何をいくらで仕入れた、ということはメモしておくことをオススメします)
もちろん、シェアキッチンの作り手さんでも扶養に入らずお菓子販売を本業にしていきたい方は開業届を出している傾向があります。
ちなみにこの記事を書いている中の人は、「物件を借りる」ということが入っていたからでしょうか、特に悩まず開業届を出しました^^;
保健所:食品衛生責任者・営業許可・届出
自分の工房を持つ、食品衛生責任者の資格が必要なシェアキッチンの場合、一番よく行くことになるのが保健所かなと思います。
食品衛生責任者
保健所の営業許可・製造許可・届出を行う際に必要な人の資格。オンライン講習や1日程度の講習受講で取得することが可能です。
関連記事:【食品衛生責任者】お菓子の販売に必要な資格をとる方法
保健所の営業許可・製造許可
- 菓子製造業:焼き菓子、生菓子、洋菓子、和菓子、パン、チョコレートなど。
- 飲食店営業:ごはんものの提供、飲食店やカフェでのイートイン、マルシェで販売するお弁当など。
- 惣菜製造業:おかずなどお惣菜を卸しで販売するなど。
- 清涼飲料水製造業:ジュースの物販など。
- 密封包装食品製造業(旧:缶詰又は瓶詰食品製造業):常温で長期保存する瓶詰め食品(ジャムなど)やレトルト食品製造の際に必要。
保健所の届出
前述の営業許可・製造業の許可と、許可不要業種の間にできた、届出(とどけで)という制度です。衛生的な環境であれば製造場所は問われませんが、原材料名などの食品表示ラベルは必要です。
消防署:防火管理者(乙種)
防火管理者という、消防に関する資格があります。防火管理者の資格が必要かどうかは、工房を構える環境、利用先のシェアキッチンによって異なるので、自分で工房を構えることを考えている場合は管轄の消防署、シェアキッチンで始めようと考えている場合は検討先のシェアキッチンさんにそれぞれ問い合わせていただくことをおすすめします。
防火管理者の資格は甲種と乙種の2つがあり、小さなお菓子屋さんが求められるとしたら乙種の場合がほとんどだと思います(マンションの一室でシェアキッチンを運営している、この記事の中の人は乙種を取りました)
乙種は消防署の一日講習で取得できます。気になる方は、一度管轄の消防署さんに電話問い合わせしてみることをおすすめします。
・参考:名古屋市HP 防火・防災管理に関する各講習の概要(消防法に規定する資格取得の講習)
https://www.city.nagoya.jp/shobo/page/0000008431.html
食中毒などの保険・マルシェ出店の保険
お菓子を作って、マルシェで販売したり、通販で販売しようと思うと、「食中毒とか、食の事故が起こってしまった時どうしよう…涙」と、ちらりと頭をよぎったことはありませんか?
もちろん、作業中に食中毒や異物混入など事故を起こさないように気をつけて作業するのです。
気をつけて作業するのですが、万が一起こしてしまった時のための保険ってあるのかな?と連想した方、食の保険、あります!
月500円〜年間1万円まで色々ありますが今回、年間1,000円程度のものが見つかったので共有します!
- PL保険(生産物賠償責任保険):商品による事故や食中毒に備えるもの。
- 施設賠償(施設所有管理者賠償責任保険):テント出店しているマルシェなどで、テントなど施設や設備による事故に備えるもの。
関連記事:【PL保険】小さなお菓子屋さんの食の保険
商工会:補助金・助成金・融資の活用方法
商工会は、地域の事業者の経営相談に乗ってくれる公的団体です。年会費(名古屋市は1万円)の仕組みがあるので、年会費を払って会員になるも良しですし、会員にならなくても相談に乗ってくださいますので、まずは一旦相談してから会員になるかならないかを検討するのも良いと思います。
資金調達方法の比較
| 貯金/身内から借りる | 融資 | 補助金 | |
| 審査 | なし? | あり | あり |
| 返済義務 | 家族会議 | あり | なし |
| 報告義務 | 家族会議 | なし | あり |
| スケジュール | なし | なし | 補助金ごとに 決まっている |
記事を書いている中の人は、シェアキッチンを作った2015年当時、補助金や融資のことは知らず、「有金なけなしの100万円(貯金)」で作りました。融資を受けなければ月々返済するものはないわけですが、貯金が減るので手元の現金が目減りしました^^;
今もし2015年当時に戻るとしたら…
- 小規模事業者持続化補助金(75万円使った内の50万円〜)
- 創業支援融資(日本政策金融公庫)
- 地域独自の支援金・助成制度
あたりを一旦は検討するかなと思います。
個人事業主のお菓子屋さんが備えておきたい3つの制度
小さなお菓子屋さんは、企業に所属するのと違って、自分が動いた分だけ収入が増えやすい個人事業主です。裏を返せば、動けなかった分、収入が減りやすいです。なので、できる限りで備えをしておきましょう。
- 小規模企業共済:国(中小機構)がつくった「経営者の退職金制度」
- 少額投資非課税制度(NISA、新NISA):投資に対する税金の優遇制度
- 個人型確定拠出年金(iDeCo):公的年金に加えて(上乗せして)給付を受け取れる私的年金
関連記事:知らないと損!小さなお菓子屋さんでも使える助成金・補助金の探し方と申請のコツ
まとめ|起業の準備を「見える化」しよう
お菓子を作る以外のこと、結構ありますよね^^;
- やらなければいけないこと
- やっておいた方が良いこと
- やるかやらないか各自の自由
という話題が混在しています。一つ一つ優先順位をつけて取り組んでいきましょう^^
よくある質問(FAQ)
Q1. 開業届は出さないといけませんか?
A.「規模感による」と考えています。
国税庁のホームページには
新たに事業を開始したとき、事業用の事務所・事業所を新設、増設、移転、廃止したとき又は事業を廃止したときの手続です。
とありますが、個人的には「規模感による」かなぁと考えています。
開業届を出しても出さなくても、確定申告をする必要がある人に該当すれば、確定申告をしなければならないので、開業届は「気持ちの問題」かなと思いつつです。
Q2.食品衛生責任者は取得しないといけませんか?
A.製造環境によります。
- 作り手さん(お菓子販売希望者)名義の許可を取るシェアキッチン
- 自分の工房を持つ
という時には食品衛生責任者を取得しないといけませんが、シェアキッチン運営者さんの許可書の元で活動するシェアキッチンの場合は、食品衛生責任者の取得は必須ではない場合があります。
保健所の営業許可は、人の資格(食品衛生責任者)×物件の資格(保健所の要件を満たしたキッチン)のセットで取るため、シェアキッチン運営者さんの許可書が存在する時点で、「誰かはそのキッチンの食品衛生責任者となっている」のです。
なので、作り手さん(お菓子販売希望者)が、食品衛生責任者であっても、食品衛生責任者でなくても、保健所の営業許可としては関係がない、となります。
ただし、シェアキッチン運営者さんが「あんまり飲食の知識がない方にご利用いただくのも心配だなぁ…」ということで、食品衛生責任者の資格を持っていることをシェアキッチンの利用条件としている場合があります。
シェアキッチン利用を検討している場合は、まずは気になるシェアキッチンに問い合わせ、見学に行かれると良いです^^
Q3.開業届を出したら扶養はどうなりますか?
開業届を出す=扶養から外れる、とはならないと認識しています。年間の「収入金額」や「所得金額」によって変わります。
たとえば「配偶者控除の対象になるかどうか」は、以下のような基準があります:
| 税制上の扶養 | 所得基準(目安) |
|---|---|
| 配偶者控除あり | 所得48万円以下(収入103万円程度) |
| 配偶者特別控除あり | 所得48万円超〜133万円以下 |
また、健康保険上の扶養(国保ではなく被扶養者として加入している場合)は、事業所得が「年収130万円未満」で、かつ雇用保険などがないなどの条件を満たす必要があります。
ポイント:
- ざっくり計算:所得=売上−経費
- 開業届を出したから即扶養から外れるわけではない
- 心配な方は税務署や保険組合に事前確認がおすすめです!
Q4.お菓子販売の売上がいくらくらいになったら税金が発生しますか?
課税の対象になるかどうかは、「売上」ではなく「所得(売上−経費)」で決まります。
基準となるのは以下のとおり:
| 区分 | 所得基準 | 対象 |
|---|---|---|
| 所得税の課税対象 | 年間所得48万円超 | 個人全般 |
| 住民税の課税対象 | 年間所得43万円超 | 市区町村による |
| 消費税の対象 | 原則:年間売上1,000万円超 | 2年前の売上に基づく |
たとえば、材料費や包装資材などの「経費」が多くかかっていれば、たとえ売上が100万円を超えていても所得が48万円以下であれば所得税はかかりません。
ポイント:
- 経費の記録をしっかりつけることが重要です!
- 副業や少額スタートでも、確定申告が必要になる場合があります。
Q5.副業としてお菓子販売する場合、気をつけるべきことはありますか?
A:はい、いくつか大切なポイントがあります!
- 勤務先の就業規則を確認しましょう
就業規則により副業が禁止または事前申請が必要な場合があります。 - 食品衛生法や営業許可の確認を忘れずに
保健所の営業許可が必要になるので、シェアキッチンを利用する場合は、作りたいものの許可をカバーしているか要確認。 - 確定申告・扶養の影響も要チェック
売上が増えてきたら「所得税」「住民税」などの申告が必要になります。収入が扶養範囲を超えると、税制・保険に影響が出ることも。 - ブランドやSNS発信は“本業バレ”の注意も
本名や会社名を出さずに活動している人も多いですが、ネットショップには販売責任者の記載が必須だったり、商品の発送元の住所、ラベルに製造者の氏名と住所の記載することで身バレのリスクがあります^^;
ポイント:
- 「バレずにやりたい」「軌道に乗せて独立したい」など目的によってやり方を変えるのが大事です!
- 販売先やプラットフォームによっては屋号・氏名・所在地の表示義務がある場合もあります。
はてさて、実際にやり始めてみると、わからないことがたくさん出てきます。このページで取り上げたものは、ある程度「正解がある話」なので、
- 開業届、確定申告→税務署
- 食品衛生責任者、営業許可→シェアキッチンさん、保健所
- 防火管理者→消防署
- PL保険→保険屋さん
- 補助金、融資、帳簿付け、経営指導他→商工会
わからない時は、それぞれの担当窓口に電話問い合わせしてみましょう!平日日中対応のところが多いですが、時間を作って電話してみましょ^^
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