お菓子を作って販売するには、基本的に保健所の営業許可を取った製造場所が必要です。

選択肢としては、シェアキッチンを借りる、自宅の一部を工房にする、お庭にコンテナキッチンを置く、物件を借りて菓子工房を作るなどがあります。

どの方法にもメリット・デメリットがあり、初期費用、通いやすさ、使える時間、必要な設備、保健所への相談内容が変わります。

この記事では、お菓子販売を始めたい方に向けて、作る場所の選び方、必要な設備、菓子製造業許可、食品衛生責任者、HACCP、保険までをまとめて整理します。

まずはこの記事で全体像をつかみ、自分はどのルートが合いそうかを考えてみてください。

この記事で分かること
  • お菓子販売に使える製造場所の選択肢
  • シェアキッチン・自宅工房・コンテナキッチン・物件工房の違い
  • 菓子製造業許可を考える時の基本
  • 食品衛生責任者・HACCP・防火管理者の考え方
  • お菓子販売で確認したい保険
  • 自分に合った作る場所の選び方

知りたい内容が決まっている方へ

この記事では、お菓子販売に使う「作る場所と設備」の全体像を解説しています。すでに知りたい内容が決まっている方は、下記の記事も参考にしてください。

お菓子販売は「どこで作るか」を決めるところから始まる

お菓子販売を始めるにあたって、まず最初に考えなければならないのが「どこで作るか」という製造場所です。

  • シェアキッチンを借りる
  • 自宅の一室を改装する
  • お庭にコンテナキッチンを置く
  • 物件を借りて工房を作る など

どの選択肢にもメリットとデメリットがあり、コスト・自由度・保健所対応のしやすさが変わってきます。

この記事では、それぞれの特徴を比較しながら、あなたに合った製造環境を見極めるための全体像を整理していきます。

※この記事は「作る場所と設備」の全体像をつかむための記事です。シェアキッチンの探し方、菓子製造業許可の取り方、自宅工房の作り方など、詳しい内容は別の記事で解説します。

お菓子販売に必要な許可と製造場所の基本条件

順番に見ていきましょう!

商品を作る場所に、保健所の営業許可があること

お菓子や手作り食品を作って販売するためには、基本的に、製造場所に保健所の許可が必要です。

ここで大切なのは、「自分が作りたいもの」と「販売方法」によって、必要な許可が変わるということです。

焼き菓子、生菓子、パン、チョコレートなどを販売する場合は、菓子製造業許可が関係してくることが多いです。

一方で、カフェでの提供、お弁当販売、惣菜販売、瓶詰め食品などは、別の許可が関わる場合もあります。

「お菓子だから全部同じ許可でOK」と考えず、何を作り、どこで売り、どのように届けるのかを整理したうえで、管轄の保健所に確認しましょう。

営業許可は「物件の条件」と「人の条件」で考える

保健所の営業許可は、
営業許可=物件の条件×人の条件
と考えるとわかりやすいです。

物件の条件としては、たとえば、

  • 生活用のキッチンとは別であること
  • 2槽シンクや手洗いがあること
  • 掃除しやすい床や壁であること
  • 製造内容に合った設備があること

などが見られます。

ただし、必要な設備や判断は自治体によって異なります。

人の条件としては、食品衛生責任者が必要になります。

食品衛生責任者は、講習を受けて取得するほか、調理師・栄養士・製菓衛生師など食の資格がある場合は講習免除になることもあります。

まずは、「許可を取るには、場所と人の両方を整える必要がある」と考えておきましょう。

製造場所の比較|シェアキッチン vs 自宅・コンテナキッチン・工房

最初から正解を選ぼうとしすぎなくて大丈夫です。まだ販売経験が少ない方は、まずはシェアキッチンで小さく試す。販売頻度が増えてきた方は、自宅工房・コンテナキッチン・物件工房を検討する、という流れが現実的です。

  • 初期費用を抑えたい:シェアキッチンから小さく始める
  • まず一度販売してみたい:シェアキッチン
  • 家の近くで作業したい:自宅工房・コンテナキッチン
  • 販売頻度が高くなってきた:物件を借りた工房
  • 住所公開が不安:シェアキッチン・物件工房も検討
    (ただし、ご自身の住所を完全に伏せられるわけではないので注意
     ▶︎お菓子の販売はしたいけど自宅住所は伏せたい?できること・できないことを解説

シェアキッチン自宅改装コンテナキッチン物件を借りる
費用初期費用少ない
レンタル代
1時間1,000円
10時間1万円
毎週〇曜日3万円など
120万円程度〜150万円〜
雪国エリア(断熱材)200万円超〜
物件取得費
家賃
光熱費
工房改装費100万円〜
通いやすさ近くにあったらラッキー!
自分で決めた立地ではないので通いにくい場合が多い
職住接近!お庭にコンテナキッチン!
職住接近!
自分で場所を決められる
利用時間事前予約制
使いたい時間に使えるとは限らない
終わりの時刻が決まっている
自由自由自由
留意点取得している(取得できる)許可がそれぞれ異なる家族の理解が必要家族の理解が必要維持費がかかる

※補足:費用感は地域や工事内容で大きく変わります。詳細は各自治体や施工会社に確認しましょう。

※ここでは製造場所を比較するための目安として掲載しています。シェアキッチンの詳しい料金体系や月額利用の考え方は、別記事で解説します。

シェアキッチンを借りる

メリット:初期費用が安い、製造許可済(もしくは製造場所として保健所に申請可能)、販路サポート付きの施設もあります。

デメリット:1時間いくら、1日いくらと利用料がかかる、利用時間が限られる、ある所にはあるけれどない所にはほぼ全くない現在です、、、

自宅の一部を改装して自宅工房にする

原則、生活用として使用しているキッチンは「菓子製造業許可」「飲食店営業」他、保健所の許可が取れません。

自宅の一室を改装して、生活用のキッチンとは異なるキッチンを作って保健所の許可を取っている人もいます。

メリット:職住接近!通勤時間ゼロ!

デメリット:対面販売をしたい場合は、そもそも自宅の立地条件が対面販売に向いているかどうかの検討が必要。

お庭にコンテナキッチンを置く

メリット:自宅のお庭に置くことが多いので通勤時間ゼロ!職住接近!自宅敷地内なので家賃がかからない場合が多いです。

デメリット:鉄板屋根の向こうは太陽や外気!夏は暑さ、雪国エリアは冬の寒さ、断熱が課題。

物件を借りて菓子工房を作る

メリット:自宅住所ではないので発送伝票や住所等の記載に抵抗感が少ないです。

デメリット:初期費用や改装費が高額(数百万〜)、月々の家賃や光熱費がかかります。

オススメ:迷ったら、まずは小さく試せる方法から考える

シェアキッチンは

  • あるところにはあるけど、ないところには全くない
  • あっても費用的に高い
  • お菓子の売り上げで黒字になるイメージができない
  • 遠いので通うのは距離的、時間的に難しい…

と色々デメリットはありますが、少し遠くても、単発の販売での収支は赤字予想だったとしても、行ける範囲にシェアキッチンがあるのであれば、一度借りて、作って、販売してみることをオススメします。

理由は、百聞は一見にしかずだからです。

  • まずは一度、シェアキッチンに行って、製造して、包装して、販売というところまで体験することが本当に大事!
  • 仮に1時間1,000円〜2,000円程度のレンタルキッチン代で、5時間使って1万円だったとしても、自分で工房を構えるよりは格段に安く済む(1ヶ月まるまる借りて20万円、とかは一度よく考えた方が良いかもです)

実際に作ってみると、

「思ったより作業時間がかかる」
「包装とラベルが大変」
「販売まで考えると、作る以外の準備が多い」
「やってみたら、思っていた販売スタイルと違った」
「近くのシェアキッチンで試したけど、備品が少なくて大変だった。次は、少し遠くても備品が充実している所にしよう」

ということが見えてきます。

大きなお金を動かす前に、まず小さく試す◎

これは、お菓子販売を始めるうえでとても大切な考え方です。

実際に過去の作り手さん(シェアキッチン利用者)で、自宅工房の改装工事をしている期間、シェアキッチンを利用して販売活動を始められたら…ということで、すたーとあっぷきっちんを何度かご利用いただきました。

いざお菓子の製造販売をしてみると「なんだか思ってたんと違う」となられたようで、「やりたいことはお菓子の販売ではないかもしれない…」とおっしゃっていました。

なので、物件改装や物件取得、改装工事などの大きなお金を動かす前に、まずは数千円〜高くても数万円で、シェアキッチンを活用して、お菓子販売の一連の流れを体験することがオススメです。

まず小さく始めたい方へ

最初から自宅工房や物件改装に大きなお金をかけるのが不安な場合は、シェアキッチンで小さく販売経験を積む方法もあります。

お菓子販売で確認したい許可・資格・衛生管理の全体像

保健所の許可や衛生管理、消防署への問い合わせ事項を紹介します。

保健所の営業許可・製造許可

  • 菓子製造業:焼き菓子、生菓子、洋菓子、和菓子、パン、チョコレートなど。
  • 飲食店営業:ごはんものの提供、飲食店やカフェでのイートイン、マルシェで販売するお弁当など。
  • 惣菜製造業:おかずなどお惣菜を卸しで販売するなど。
  • 清涼飲料水製造業:ジュースの物販など。
  • 密封包装食品製造業(旧:缶詰又は瓶詰食品製造業):常温で長期保存する瓶詰め食品(ジャムなど)やレトルト食品製造の際に必要。

▶︎菓子製造業許可とは?お菓子販売に必要な営業許可を初心者向けに解説

▶︎自宅で菓子製造業許可は取れる?自宅キッチン販売の現実と注意点

保健所の届出

前述の営業許可・製造業の許可と、許可不要業種の間にできた、届出(とどけで)という制度です。

衛生的な環境であれば製造場所は問われませんが、原材料名などの食品表示ラベルは必要です。

食品衛生責任者

食品衛生責任者は、保健所の営業許可・製造許可・届出を行う際に必要になる、人の資格です。

各自治体の食品衛生協会などが実施する講習を受講して取得できます。

近年はオンライン講習や1日程度の講習で取得できる地域もあります。

また、調理師、栄養士、製菓衛生師などの資格を持っている場合は、講習を受けなくても申請だけで食品衛生責任者になれるエリアもあります。

▶︎食品衛生責任者とは?お菓子販売に必要な資格と取得方法

HACCP(ハサップ)

HACCPは、食品を衛生的に製造・管理するための考え方です。

2021年6月から、規模の大小に関わらず、HACCPに沿った衛生管理が必要になっています。

個人であっても、シェアキッチン利用者であっても、取り組む必要があります。

シェアキッチンでは、ルールが整備されていることもあるので、見学時に確認しましょう。

自分自身で工房を持って許可を取る場合は、管轄の保健所に確認しながら、衛生管理の記録を整えていきましょう。

防火管理者

自分で工房を構える場合や、シェアキッチンを運営する場合は、保健所だけでなく消防署への確認が必要になることがあります。

防火管理者が必要かどうかは、建物の用途、面積、利用人数などによって変わります。物件を借りる場合や工房を作る場合は、管轄の消防署にも確認しておきましょう。

▶︎防火管理者が必要なケースと手順

保険も忘れずに確認しよう

PL保険

お菓子を作って、マルシェで販売したり、通販で販売しようと思うと、「食中毒とか、食の事故が起こってしまった時どうしよう…涙」と、ちらりと頭をよぎることがあるかもしれません。

もちろん、作業中に食中毒や異物混入など事故を起こさないように気をつけて作業します。

気をつけて作業するのですが、万が一起こしてしまった時のための保険もあります。

PL保険は、生産物賠償責任保険とも呼ばれ、商品による事故や食中毒、異物混入などに備える保険です。

施設賠償

マルシェ出店がある場合は、施設賠償も確認しておきたいところです。

たとえば、テント出店をしているマルシェなどで、テントなどの施設や設備によって事故が起きた場合に備えるものです。

PL保険は「商品そのもの」にまつわる事故、施設賠償は「出店ブースや設備」にまつわる事故、と考えるとイメージしやすいです。

自分の工房を持つなら火災保険も確認

シェアキッチンを借りてお菓子を作って、マルシェやネット通販で販売する場合は、PL保険や施設賠償を検討する形になります。

一方で、自分の工房を構える場合は、火災保険も確認しましょう。

賃貸物件やテナント物件への入居時に、火災保険加入について大家さんや管理会社さんから案内されることも多いです。

保険の内容は保険会社によって異なります。

自分の販売方法、売上規模、出店の有無、製造場所の形に合わせて、保険会社さんに確認しましょう。

次におすすめの記事はこちら

お菓子販売の作る場所には、いくつかの選択肢があります。

この記事で全体像をつかんだら、次は自分の状況に近い記事から読んでみてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. シェアキッチンを使えば、保健所の許可が取れますか?

A. 利用するシェアキッチンと保健所の判断によります。

多くのシェアキッチンは許可取得済みですが、作り手さん(シェアキッチン利用者)自身の申請が必要な場合もあります。

「菓子製造業許可」「飲食店営業許可」など、シェアキッチン側がすでに取得している許可のもとで活動してください、と案内される場合と、作り手さん(シェアキッチン利用者)自身が名義で許可を取ってください、と言われる場合があります。

どちらかは施設と保健所次第なので、気になるシェアキッチンがあれば、まずは問い合わせの上、見学に行ってみましょう^^

許可名義や販売できる範囲については、別記事で詳しく解説します。

Q2. 自宅のキッチンで作ったものは販売できますか?

A. 原則として、普段の食事を作る生活用のキッチンで作ったものは販売できません。

自宅でも許可を取れるケースはありますが、生活用のキッチンとは別に、営業用のキッチンを作る必要があります。

例えば、一戸建てのお家で、
・1階に生活用のLDKがあり、その上の2階の一角にキッチンを作った
・南側に生活用のLDKがあり、北側の一室を潰して営業用のキッチンを作った
・使っていない和室を片付けて、営業用のキッチンを作った
というお菓子屋さんたちがいらっしゃいます。

詳しくは、管轄の保健所に図面を持って相談しましょう。

Q3. 食品衛生責任者の資格はどうすれば取れますか?

A. 各自治体の食品衛生協会などが実施する講習を受講して取得するのが一般的です。

近年はオンライン講習での受講も拡大しています。

参考:名古屋市の食品衛生責任者講習

自治体によっては、食の資格(調理師、栄養士、製菓衛生師など)を持っていれば、1日講習を受けなくても、申請だけで食品衛生責任者の資格が取れるエリアがあります。

一度保健所に問い合わせてみることをオススメします。

Q4. HACCPは個人でも導入しなければいけませんか?

A. はい。規模の大小にかかわらず、HACCPに沿った衛生管理が必要です(2021年6月から義務化)

個人であっても、シェアキッチン利用者であっても、取り組む必要があります。

シェアキッチンではルールが整備されていることがあるので、見学時に確認しましょう。

自分自身で工房を持って許可を取ることを考えている場合は、管轄の保健所さんに問い合わせましょう。

Q5. 開業時に入っておくべき保険はありますか?

A. 万が一の事故やクレームに備え、PL保険(生産物賠償責任保険)の加入が選択肢の一つです。

年間の保険料が5,000円程度〜で入れます。
(2026年1月末までは1,000円程度で入れましたが、2026年2月から保険料が改定となりました、、、)

この記事を書いている、すたーとあっぷきっちん中の人も保険に加入していますが、幸い、事故になって保険に頼った経験がないため、【安心のために加入してはいるけれど、入っている保険が実際に使い物になるかどうか】は未知の領域です…。

▶︎PL保険とは?お菓子販売で入るべき理由

まとめ:大きなお金を動かす前に、小さく販売体験をしてみよう

お菓子販売を始めるには、まず「どこで作るか」を考える必要があります。

シェアキッチン、自宅工房、コンテナキッチン、物件を借りた工房。

どの選択肢にもメリットとデメリットがあります。

大切なのは、今の自分の段階に合った始め方を選ぶことです。

いきなり物件を借りて改装するのは、費用も時間も大きくかかります。

まずはシェアキッチンを借りて、作って、包装して、販売してみる。

その体験を通して、

  • どれくらい作れるのか
  • どれくらい売れるのか
  • どんな設備が必要なのか
  • どんな販売方法が合っているのか
  • 本当に続けたいのか

が見えてきます。

お菓子販売は、お菓子を作るだけでは終わりません。

作る場所、許可、設備、ラベル、包装、販売場所、保険、衛生管理まで整えて、ようやくお客様に安心して届けることができます。

まずは大きく始めるより、小さく試す。

その一歩として、この記事を参考に、自分に合った作る場所を探してみてくださいね。

お菓子販売を始めたい方へ

最初から完璧な工房を作らなくても大丈夫です。

まずは、小さく作って、小さく販売して、実際にお客様に届ける体験をしてみることが大切です。

「自分の場合は何から始めたら良い?」
「シェアキッチンと自宅工房、どちらが合っている?」
「許可やラベル、販売方法まで整理したい」

そんな方は、個別相談で一緒に現在地を整理しましょう。

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ABOUT ME
yuko kimura
名古屋で菓子製造/飲食店営業許可付きシェアキッチン"すたーとあっぷきっちん"を営んでます / @startup5kitchen / '88年名古屋生 / 名工大建築卒 / 栄養士 / 一児の母 / 小さなお菓子屋さん始め、やりたいことに一歩踏みだす人を増やしたい!