「お菓子作りが得意で、販売に興味があるけれど、何から始めたら良いかわからない…」というお悩みはありませんか?実は手作りお菓子を販売するためには、「保健所の営業許可を取ったキッチン」が必要です。この記事では、シェアキッチン・自宅・工房の違いから、必要な保健所の許可や資格、保険までをわかりやすく解説します。
目次
はじめに:作る場所・設備を整える重要性
お菓子販売を始めるにあたって、まず最初に考えなければならないのが「どこで作るか」という製造場所です。お庭にコンテナキッチンを置いたり、自宅の一室を改装する人もいれば、シェアキッチンや工房を借りる人もいます。
どの選択肢にもメリットとデメリットがあり、コスト・自由度・保健所対応のしやすさが変わってきます。本記事では、それぞれの特徴を比較しながら、あなたに合った製造環境を見極めるポイントを整理していきます。
シェアキッチン vs 自宅・コンテナキッチン・工房|製造場所の比較
「お菓子を作って販売しようと思っていろいろ調べていたら、自宅とは異なるキッチンが必要」という情報に辿り着いて、「どうしよう…」と感じる一番最初の大きな壁ですよね><
選択肢の比較を簡単にまとめてみました!
| シェアキッチン | 自宅改装 | コンテナキッチン | 物件を借りる | |
|---|---|---|---|---|
| 費用 | 初期費用少ない レンタル代 1時間1,000円 10時間1万円 毎週〇曜日3万円など | 120万円程度〜 | 150万円〜 雪国エリア(断熱材)200万円超〜 | 物件取得費 家賃 光熱費 工房改装費100万円〜 |
| 通いやすさ | 近くにあったらラッキー! 自分で決めた立地ではないので通いにくい場合が多い | 職住接近! | お庭にコンテナキッチン! 職住接近! | 自分で場所を決められる |
| 利用時間 | 事前予約制 使いたい時間に使えるとは限らない 終わりの時刻が決まっている | 自由 | 自由 | 自由 |
| 留意点 | 取得している(取得できる)許可がそれぞれ異なる | 家族の理解が必要 | 家族の理解が必要 | 維持費がかかる |
※補足:費用感は地域や工事内容で大きく変わります。詳細は各自治体や施工会社に確認しましょう。
シェアキッチン
メリット:初期費用が安い、製造許可済(もしくは製造場所として保健所に申請可能)、販路サポート付きの施設もあります。
デメリット:1時間いくら、1日いくらと利用料がかかる、利用時間が限られる、ある所にはあるけれどない所にはほぼ全くない現在です、、、
関連記事:全国のシェアキッチンリスト
関連記事:【初めてのお菓子販売】シェアキッチンを選ぶポイント
自宅キッチン・自宅改装
原則、生活用として使用しているキッチンは「菓子製造業許可」「飲食店営業」他、保健所の許可が取れません。
自宅の一室を改装して、生活用のキッチンとは異なるキッチンを作って保健所の許可を取っている人もいます。
メリット:職住接近!通勤時間ゼロ!
デメリット:対面販売をしたい場合は、そもそも自宅の立地条件が対面販売に向いているかどうかの検討が必要。
コンテナキッチン
メリット:自宅のお庭に置くことが多いので通勤時間ゼロ!職住接近!自宅敷地内なので家賃がかからない場合が多いです。
デメリット:鉄板屋根の向こうは太陽や外気!夏は暑さ、雪国エリアは冬の寒さ、断熱が課題。
自分の工房を借りる・作る
メリット:自宅住所ではないので発送伝票や住所等の記載に抵抗感が少ないです。
デメリット:初期費用や改装費が高額(数百万〜)、月々の家賃や光熱費がかかります。
関連記事:菓子工房を持つには?物件探し・改装・許可取得まで完全ガイド
オススメ:最初はシェアキッチンで試してみる
シェアキッチンは
- あるところにはあるけど、ないところには全くない
- あっても費用的に高い、お菓子の売り上げで黒字になるイメージができない
- 遠いので通うのは距離的時間的に難しい…
と色々デメリットはありますが、少し遠くても、単発の販売での収支は赤字予想だったとしても、行ける範囲にシェアキッチンがあるのであれば、一度借りて、作って、販売してみることをオススメします。
理由は、
- 百聞は一見にしかず!まずは一度、シェアキッチンに行って、製造して、包装して、販売というところまで体験することが本当に大事!
- 仮に1時間1,000円〜2,000円程度のレンタルキッチン代で、5時間使って1万円だったとしても、自分で工房を構えるよりは格段に安く済む(1ヶ月まるまる借りて20万円、とかは一度よく考えた方が良いかもです)
実際に過去の作り手さん(シェアキッチン利用者)で、自宅工房の改装工事をしている期間、シェアキッチンを利用して販売活動を始められたら…ということですたーとあっぷきっちんをご利用いただいていたのですが、いざお菓子の製造販売をしてみると「なんだか思ってたんと違う」となられたようで、「やりたいことはお菓子の販売ではないかもしれない…」とおっしゃっていました。
なので、物件改装や物件取得、改装工事などの大きなお金を動かす前に、まずは数千円〜高くても数万円で、シェアキッチンを活用して、お菓子販売の一連の流れを体験することがオススメです。
お菓子販売で必要な製造許可と資格|HACCPと食品衛生責任者まで解説
そもそもお菓子や手作り食品を作って販売するためには、【製造場所(飲食店やカフェの場合は提供場所)に保健所の許可が必要】です。保健所の許可を取るために必要なことを解説します。
保健所の営業許可・製造許可
- 菓子製造業:焼き菓子、生菓子、洋菓子、和菓子、パン、チョコレートなど。
- 飲食店営業:ごはんものの提供、飲食店やカフェでのイートイン、マルシェで販売するお弁当など。
- 惣菜製造業:おかずなどお惣菜を卸しで販売するなど。
- 清涼飲料水製造業:ジュースの物販など。
- 密封包装食品製造業(旧:缶詰又は瓶詰食品製造業):常温で長期保存する瓶詰め食品(ジャムなど)やレトルト食品製造の際に必要。
保健所の届出
前述の営業許可・製造業の許可と、許可不要業種の間にできた、届出(とどけで)という制度です。衛生的な環境であれば製造場所は問われませんが、原材料名などの食品表示ラベルは必要です。
食品衛生責任者
保健所の営業許可・製造許可・届出を行う際に必要な人の資格。オンライン講習や1日程度の講習受講で取得することが可能です。
関連記事:【食品衛生責任者】お菓子の販売に必要な資格をとる方法
HACCP(ハサップ)
2021年6月から義務化された、衛生管理のルールで、保健所への提出義務はありませんが、1年間の保管義務があります。
物件探しと設備準備:どれくらい費用がかかる?
この記事を書いている中の人は、2015年当時、日本にほとんどシェアキッチンがなかったので(後から調べたら1-2軒はありました!)、「パンを焼いてマルシェで販売したい!」というやりたいことを叶えるためには、製造場所を作るところから始めなければなりませんでした。
「店舗をやりたい」「カフェをやりたい」という気持ちはなかったので、路面店ではなく、【工房だけあれば良い】ということで、マンションの一室を賃貸で借りて、改装して、保健所の許可をとりました。
- 物件取得費+改装費用:家賃日割り+改装費用など合計して100万円程度。
- 設備投資:最初は最低限自分が困らない設備で始めて、徐々に増やしていきました。(ガスオーブン:中古で3万円程度、数年後に10万円程度の新品に買い替え。スタンドミキサー:中古で3万円超)
関連記事:【営業許可】お菓子の販売に必要な許可を自分でとる方法
防火管理者・安全対策と保険の加入方法
防火管理者
お菓子を作って売ろうと思うと保健所の営業許可が必要です。ですが、役所関係は保健所だけで良いかというと、実はもう一つ行くべきところがありました…!それが、消防署です。
防火管理者という、消防に関する資格があります。防火管理者の資格が必要かどうかは、工房を構える環境、利用先のシェアキッチンによって異なるので、自分で工房を構えることを考えている場合は管轄の消防署、シェアキッチンで始めようと考えている場合は検討先のシェアキッチンさんにそれぞれ問い合わせていただくことをおすすめします。
保険|PL保険・施設賠償・火災保険
お菓子を作って、マルシェで販売したり、通販で販売しようと思うと、「食中毒とか、食の事故が起こってしまった時どうしよう…涙」と、ちらりと頭をよぎったことはありませんか?
もちろん、作業中に食中毒や異物混入など事故を起こさないように気をつけて作業するのです。
気をつけて作業するのですが、万が一起こしてしまった時のための保険ってあるのかな?と連想した方、食の保険、あります!
月500円〜年間1万円まで色々ありますが今回、年間1,000円程度のものが見つかったので共有します!
- PL保険(生産物賠償責任保険):商品による事故や食中毒に備えるもの。
- 施設賠償(施設所有管理者賠償責任保険):テント出店しているマルシェなどで、テントなど施設や設備による事故に備えるもの。
関連記事:【PL保険】小さなお菓子屋さんの食の保険
シェアキッチンを借りてお菓子を作ってマルシェやネット通販で販売する、という場合は上記2つの保険でOKなのですが、自分の工房を構える、といった場合は、火災保険も入りましょう(賃貸物件やテナント物件への入居時に火災保険加入について大家さんや管理会社さんから言われると思います)
失敗しないためのチェックリスト(初心者さん向け)
シェアキッチン活用ルートと、自分で工房を作るルートに分けて解説します。
まずはシェアキッチンで試してみる【シェアキッチン】
- GoogleやInstagram等で検索する:【地名 シェアキッチン】【地名 レンタルキッチン】
- 問い合わせて見学の日程を決める
- 見学に行く(何軒かあるなら、気になるところは全て行く)
- 食品衛生責任者講習やシェアキッチン独自の衛生講習等、利用前に受ける必要があるもののダンドリ(申し込みや受講)を決める
自分で工房を用意する【お庭にコンテナキッチン】
- お庭にコンテナキッチンを置くことも考えながら、少し遠くてもシェアキッチンを探してみる(コンテナキッチンを置くより少額で販売体験ができるから)
- コンテナ屋さんの展示場へ見学、問い合わせ
- 見積もり依頼
- 保健所に図面を持って相談に行く
- 設置や購入のダンドリを相談して決める
- 費用や設置スケジュール等OKならコンテナ屋さんと契約
- 保健所に許可申請、現場検査を受ける
自分で工房を用意する【自宅等持ち物件を改装する】
- 物件改装を考えながら、少し遠くてもシェアキッチンを探してみる(改装するよりずっと少額で販売体験ができるから)
- 検討物件の図面(平面図、間取り等)を持って、管轄の保健所(物件住所のある保健所)に相談に行く
- 工事屋さんを探す:工務店、リフォーム会社、ハウスメーカー、水道屋さん等に相談する
- 工事屋さんに見積もりを依頼する
- 工事屋さんが出してきた図面を持って保健所に相談に行く
- 保健所、改装費用、工事のスケジュール等がOKなら契約して工事する
- 保健所に許可申請、現場検査を受ける
よくある質問(FAQ)
Q1. シェアキッチンを使えば、保健所の許可が取れますか?
A. 利用するシェアキッチンと保健所の判断によります。多くのシェアキッチンは許可取得済みですが、作り手さん(シェアキッチン利用者)自身の申請が必要な場合もあります。
「菓子製造業許可」「飲食店営業許可」など、シェアキッチン側がすでに取得している許可のもとで活動してください、と案内される場合と、作り手さん(シェアキッチン利用者)自身が名義で許可を取ってください、と言われる場合があります。
どちらかは施設と保健所次第なので、気になるシェアキッチンがあれば、まずは問い合わせの上、見学に行ってみましょう^^
Q2. 自宅のキッチンで作ったものは販売できますか?
A. 原則できません。生活用のキッチンは営業許可が取れないため、別室を改装して専用キッチンを設ける必要があります。
例えば、一戸建てのお家で、
・1階に生活用のLDKがあり、その上の2階の一角にキッチンを作った
・南側に生活用のLDKがあり、北側の一室を潰して営業用のキッチンを作った
・使っていない和室を片付けて、営業用のキッチンを作った
というお菓子屋さんたちがいらっしゃいます。
自宅でも許可はとれますが、普段の食事を作る生活用のキッチンではなく、別に営業用のキッチンを作る必要があります。
Q3. 食品衛生責任者の資格はどうすれば取れますか?
A. 各自治体の食品衛生協会が実施する講習を1日受講すれば取得可能です。近年はオンライン講習での受講も拡大しています。
自治体によっては、食の資格(調理師、栄養士、製菓衛生師など)を持っていれば、1日講習を受けなくても、申請するだけで、食品衛生責任者の資格が取れるエリアがあります。一度保健所に問い合わせてみることをオススメします。
Q4. HACCPは個人でも導入しなければいけませんか?
A. はい。規模の大小にかかわらず、2021年6月からHACCPに沿った衛生管理が義務化されていますので、個人であっても、シェアキッチン利用者であっても、取り組む必要があります。
シェアキッチンではルールが整備されていることがあるので、見学時に確認しましょう。自分自身で工房を持って許可を取ることを考えている場合は、管轄の保健所さんに問い合わせましょう。
Q5. 開業時に入っておくべき保険はありますか?
A. 万が一の事故やクレームに備え、PL保険(生産物賠償責任保険)の加入が選択肢の一つです。年間の保険料が1,000円程度〜で入れます。
この記事を書いている、すたーとあっぷきっちん中の人も保険に加入していますが、幸い、事故になって保険に頼った経験がないため、【安心のために加入してはいるけれど、入っている保険が実際に使い物になるかどうか】は未知の領域です…。
まとめ:自分に合った作る場所・設備を選ぶ
シェアキッチンで小さく体験し、将来的に事業化したい場合は工房やコンテナキッチンに進むのが安心です。
お家の近くや行きやすいエリアにシェアキッチンがあるかどうかはそれぞれだと思いますが、もし、少し遠かったとしても、問い合わせや見学、一度製造販売を試してみると、頭の中であれこれ考えていた以上のことがわかるのでオススメです^^
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